企業訪問レポート

株式会社しまの会社

12月4日今治の港から瀬戸内にある弓削島を目指し私たちの船は出港しました。空は快晴、しまなみ街道沿いに走る船は想像以上にスピードがありデッキで長時間過ごすのはためらうほどであった。弓削島は今治から60分ほどで着くに5つ目の島で、1時過ぎについて私たちをしまの会社の代表の兼頭一司さんがわざわざ出迎えてくれた。

その足で、私たちは港から程近いしまの会社が運営する「しまでCafé」で昼食を摂った。昼食は兼頭さんお勧めの地元産ポークのソテー。甘みのあるソースがポークの味を引きたてとてもおいしく頂戴した。その他にも島でとれる「摘み菜」を食材にした料理があり地産地消を目指すお店であった。このお店で、兼頭さんが「この人が居たからここに住み着いた」という村上律子さんをご紹介いただいた。
村上さんはしまの会社の取締役でもあり、島の人たちを取りまとめる中心にいる方だそうだ。村上さんには島のことをたくさん話していただいた。島のことを話す村上さんの、島に住む誇りをとても自然体で話す姿が印象的であった。昼食の後場所を変えて、兼頭さんからしまの会社や島でおこなっているさまざまな町おこしのための取組みについて話をうかがった。以下に、その感想をまとめる。

兼頭さんは、自分がこの島に関わるまでの物語を、原体験を踏まえてお話頂いた。そこには今の日本の社会に感じる問題の根本にコミュニティの崩壊があり、その問題の解決のために村上律子さんとの出会いからこの島を選び永住したこと。そしてこの島でコミュニティの再生を通しての課題の解決に取り組んでいることをわかりやすく説明頂いた。 
 そのために、地域住民が集う場所としての「しまでCafé」を作ったり、地域の人たちの抱える困りごとや夢を、地域の中の人だけではなく、地域の外の人や会社などと協力して、一緒に解決したり、実現したりしようという取り組みのしまの大学、島の50%が耕作放棄地でそれを再生しようというプロジェクトなどを立ち上げたりしていた。また特に、伝統の塩づくりの復活を通して島民の、休んでいたDNAを呼び覚まし島の誇りを取り戻す取り組みは、たとえ一度外に出た島民もいずれ島に戻ってくることになるだろうなと思わせる取組みと思った。

 この島では、島おこしのためにいろいろな言葉が用意されている。『希望の島プロジェクト』『しまの大学』『しまでカフェ』『弓削の摘み菜』『島民の島民による島民のための会社』『耕作放棄地を衰退のシンボルを再生のシンボルへ』『DNAを地域の人の誇りに』などなど、ビジョンや取り組みの趣旨などをわかりやすく表現しており、伝えるってこういうことだと思った。特にマイナスイメージとなりがちな島の問題(課題)をプラス思考の表現に置き換えていて、これは島の住民のやる気をうまく引き出されていると思った。 

 しかし兼頭さんが本当に行おうとしているのは、本気でこの島から日本を変えることだと感じた。兼頭さんが感じた今の日本の社会の問題は、過疎によって引き起こされた問題ではなくて、コミュニティの崩壊によって人間としての健全さを失うことによって引き起こされた問題でもある。それを兼頭さんは、高齢化が進む過疎地という、どちらかと言えば課題ばかり言われがちな地域で、古き良き時代の人と人が支えあう世代の割合が多いという強みを生かして日本の昔のムラ社会?のバージョンアップ版を弓削島(上島町)で実現し、最後は都市部で起こっているコミュニティの崩壊からくる社会問題の解決に一石を投じようとしているように思えたし、そうなってほしいと思った。